前回から続く。
東京とは言っても自然豊かなベットタウン。
毎日病院と寮の往復。
時々池袋に行くけど、人酔いしてさっさと帰ったことくらいしか覚えていない。
ただ寮は住宅街にあって、夜はとても静かだった。
「有休使っていいからね」
主任ナースに言われて何をしようかな~と考えていた。
夜勤をしていた時、控室にある女性週刊誌をパラパラとめっくていたら
「農家青年との交流会」に来ませんか?
交通費、宿泊費、食費無料!
ニュージーランドで貧乏生活をしていた私には、無料という文字に弱い。
聞いたことのない町は道東にあった。
いままで北海道に行ったことはあるけど道東はない。
2泊3日、有休にちょうどいい。
記載されている役場に電話をしたら、
「ぜひお越しください」とやさしそうな男性の声。
今すぐ結婚する気はないけど、農業を体験してみてもいいかな~と
参加することにした。
女性は全国から5人が集まった。
男性は8人集まっていた。
酪農1人、畑作7人。
「酪農と畑作とどちらがいいですか?」
役場の人に聞かれても、違いがわからない。
酪農は牛のミルクを搾る仕事。
畑作は玉ねぎなど畑で野菜を作る仕事。
知ってました?
本当に、農業についてなんにも知らなかった。
このお見合いねるとんツアー、
女性陣は和気あいあい。
チューリップに感動し、芝桜でピンク色に染まる山に感動し、
毛ガニ食べ放題にお酒飲み放題。
牧場では大きなトラクターに乗せていただき、
搾りたての牛乳を温めたものを飲ませていただいた。
「おいしい・・・」
その時の酪農家の女性の笑顔がとても素敵だったので、
農家も悪くないのかも、と思ってしまった…
(これはのちに後悔するんだけど)
一方の男性陣は静かな人が多く、話しかけても会話が続かない。
女性陣のパワーに圧倒されているのか、人見知りかわからないけど
本当にこの人たち結婚相手探しに来てるの?って印象だった。
その中で一番話しやすかったのが今の主人。
「実はバツイチで…結婚する気はないけど参加した」
そう聞いたとき、ほっとしたのが私の本音で。
「私も旅行気分で来てるので、お友達になってください」
といった経緯が、今の主人とのなれそめ。
本当にお友達だった。
でもここではお友達は許されなかった。
数か月後ひとりで遊びに来たら
「結婚する気もないのに来られたら迷惑」
「早く帰ってくれ」
「噂になったら困る」
今思えば当然の言葉。
でも当時の私には冷たい人たちの言葉に聞こえた。
というわけで彼とはさよなら。
旅をした写真も捨て、なかったことにした。
それから二年・・・