前回から続く
農家青年との交流会の参加者の男性から
「結婚しました」のハガキが届く。
結婚相手は交流会の参加者の女性ではなく、
農業実習で東京からやってきた女性だそう。
農業実習というのはシステム上の名前で、
実際は独身の男性農業者の家に農業実習で入って、
気が合えば結婚してねという、これも一つの出会いの方法。
ねるとん交流会はひとりもカップルが成立しなかったことと、
家出少女が参加していて警察沙汰になったこともあり、
中止になったようだ。
ハガキに書かれた電話番号にお祝いの電話を掛けると
「あいつもまだひとりでいるから電話してみたら?」と
ひさびさに彼の名前を聞く。
とっても軽い気持ちで電話を掛けると、
なつかしい声が電話口から聞こえてきた。
しばらく話した後、彼がぽつりと言う。
「俺、農家辞めるんだわ。」
「え~それもったいない!わたし嫁に行こうか?」
嫁に行く…恋愛感情ゼロで出たわたしの言葉。
憧れの北海道、住んでみたいと思っていたし、
なにより本当にもったいないと思った。
彼は今トルコキキョウを育てて出荷していると言っていた。
花農家、楽しそうじゃない?
彼の反応は…覚えてないな。
その後あっさりと結婚に進んでいった。
結婚式はしない。入籍だけ。
9月は忙しくて手が足りないだろうから、
9月1日から家に入ることにした。
看護師時代、どんな方にも感謝されてきたから、
向こうの両親と同居しても大丈夫だろう。
すべての判断が、甘かった。
9月8日彼の希望した末広がりの日に役場で入籍し、
そこで事件は起こった。
そしてこの日から悪夢の日々が始まった。
つづく